ボルダリング映画「ラスト・ホールド!」感想レビュー!スクリーン前で「ガンバ!」と叫びたくなる

クライミング

ボルダリング青春映画「ラスト・ホールド!」が2018年5月に公開されました。
公開2日目に見てきたのでクライマー目線でレビューしていきます。
※ネタバレを含みますので未視聴の方はご注意ください。

ラストホールドあらすじ

公式HPより引用

廃部寸前のボルダリング部の主将・岡島は大学卒業を控え、今や自分1人となった部を存続させるべく6人の新入部員を必死で勧誘する。が、集まった6人の内経験者は1人だけ。残りの5人はクセの強い初心者ばかり。総じて体力もなく、ボルダリングをなめてかかっているものだから試合も連敗続き。しかし、トレーニングを重ね、競技と向き合う内に、次第に楽しさを知り、固い友情で結ばれていくメンバー。そんな時、大事な団体戦の前にある事件が起こってしまう…。

ひとことで言ってしまえば青春モノとしては王道のストーリー展開ですね。
廃部寸前の弱小部、強豪校の存在、トラブル、団結・・・。事前に公開されていた情報からはそこまで期待していなかったストーリーですが、登場人物が個性的なので王道的展開でも楽しめました。
たとえばメンバーの一人の中道くん(阿部亮平)はゲーマーで潔癖症。少し人見知り的なキャラです。ボルダリングに出会う前はゲーセンでずっとぷよぷよ通をやっていました。そんなゲーマーな中道くんですが、最後の大会前にはあれだけハマっていたゲームを売ってチームのためにユニフォームを人数分買ってきます。なんといい子なのでしょうか。中道くんのようなクールなキャラが友情に熱い展開を作ってくれるとは予想もしてなかったので不覚にも僕はグっときてしまいました。
他にも筋肉オタクとしてプロテインの話で岡島くんと意気投合する高井戸くん(宮舘涼太)や、彼女をボルダリング野郎にとられて怒っているいかにも遊んでる大学生って感じの桃田くん(渡辺翔太)など、キャラクターたちが本当におもしろかった。
個性的なメンバーたちがボルダリングに出会って、ハマって、成長していく。それぞれに感情移入できるし気持ちの良いストーリーでした。

ボルダリングの競技シーン

肝心のボルダリングのシーンはどうだったんでしょうか。
作中でも言われているようにボルダリングは単純な筋力だけでなく、指の保持力、足や体幹を使ったムーブ、そのムーブを考える思考力、全身のバランス感覚など様々なチカラが必要です。特に指の保持力などは数ヶ月以上ボルダリングを継続的にしていないと身につきません。さすがに役者の方に約作りのために数か月ボルダリングさせるというのは難しいと思うので迫力あるボルダリングシーンは期待していませんでした。
ところが主演の塚田さんを始め他の方もなかなかボルダリングをやっている感じのキレのよいムーブを見せてくれました。特に塚田さんはこの映画のために事前に何度もボルダリングの練習に取り組んだとのことで、よい動きをしていました。おそらく普段から鍛えているんだと思うんですが、上裸で登るシーンではかなりキレキレの体も見せてくれます。

あまり期待していなかったボルダリングのシーンですが、役者さんの頑張りと映画の演出もあって見ごたえのある仕上がりになってます。最後の団体戦でメンバーが登るシーンなどはホントに応援したくなるほどのめりこめました。スクリーンの前なのに思わず「ガンバ!」と言いそうになってしまうほどでした。

映画の中で使われていたボルダリングのムーブは?

作中でよく出てきたのはランジとダブルダイノというムーブ。どちらも飛びついて次のホールドをとるムーブです。飛び出したあとに片手でホールドをとるとランジ(ダイノ)と呼び、両手で同時にとるとダブルダイノと呼ばれます。見た目が派手でカッコいいので映像としては使いやすいですよね。
主人公の岡島くんが片手で取るランジにこだわって失敗したシーンがありましたが、その後先輩たちがダブルダイノで行けばよかったのにとアドバイスをくれていましたね。この2つのムーブは実際のボルダリングでも選ぶのが難しいです。ダブルダイノのほうが両手でホールドをとれるのでホールドをとったあとは落ちるのに耐えられやすいですが、両手をホールドに届かせるためにランジよりもよりジャンプの距離を出さなければなりません。なので場合によってはランジを選んだほうが次のホールドを取りやすかったりします。

フィギュア4

作中ではフィギュア4というムーブが出てきました。
フィギュア4は足として踏めるホールドがない状態で体を上に上げるため、ホールドを掴んでいる手に足をかけてしまうトリッキーなムーブです。ボルダリングジムでもめったにみかけることがないムーブですが、作中では団体戦の中で登場しました。本当に珍しいムーブですがこの動画のように実践で使われることもあるようです。

リードジャパンカップ2013 東京大会 実戦でのフィギュア4 田嶋あいか選手

「ガンバ!」という掛け声

ボルダリングしている人を応援する掛け声として「ガンバ!」が何度も登場しました。
これはクライミングの文化みたいなもので、ボルダリングジムでも応援するときの掛け声として広く認知されています。
作中ではスタートからゴールまでずっとガンバと言っていましたが、ジムでは課題の難しいところ(核心)やクライマーが落ちそうな時に応援するタイミングで聞くことが多いですね。クライマーはジムで頑張っている人を見かけるとつい「ガンバ!」と声をかけたくなりますね。

自然の岩のロケ地は御岳ボルダー

メンバーが自然の岩を訪れるシーンがありますがロケ地は東京都青梅市の御岳ボルダーでした。御岳ボルダーの中でも有名な岩、忍者岩の忍者返しという課題にチャレンジしているのが確認できました。メンバーのうち桑本くんが忍者返しの課題を2手目まで取れているのが確認できました。この課題の難しいところは次の”飛ばし”ですが、おそらくここは難しくて取ることができなかったので映さなかったのだと思います。(さすがに忍者返しの飛ばしは初めて数か月のクライマーには取れないとおもいます)

気になった点

最後に、個人的に気になった点を少し。

  • 作中でやたらとプロテインで乾杯しますが実際プロテインで乾杯ってあまりしないのではないでしょうか。飲むタイミングや飲むプロテインの種類も人それぞれの考えがあって選ぶものですし、そもそもクライマーが全員プロテイン飲むわけではない
    クライマーは全員プロテインで乾杯してる!みたいな誤解されてしまいそうな心配も
  • 団体戦の最後のシーンで岡島くんが言う「掴め!ラストホールド!!」というセリフはちょっと違和感がありました。掴もうとしているホールドがそもそも課題のラストホールド(ゴールのホールド)ではないし、ラストホールドという単語もここで初めて出てきたワード。タイトルを入れたかったのかもしれませんが微妙に気になりました。(アツいボルダリングのシーンだったのでそこまで気になりませんが)

ラストホールド感想まとめ

いろいろと書いてきましたが、総合的には大満足です。
王道ストーリーに個性的でおもしろいキャラ、役者さんたちのボルダリングの腕前、どれもとても良かったと思います。初心者の方にもボルダリングの魅力が伝わるし、クライマーの方ならネタがわかってニヤニヤすること間違いなし。
映画の最後のシーンでは2020年にオリンピックの正式種目にスポーツクライミングが採用されたぞ!登るしかないね!とちゃっかりクライミングの宣伝もしてくれているのもうれしかった。
この映画をきっかけにボルダリングに興味をもってくれる人、ボルダリングに挑戦してみる人が増えるのを期待したいと思います。
ぜひ見てみてくださいね!!

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